トランスファー3

トランスファー3

ートランスファーとは一つの地点から別な地点に動くという意味ー

(3)ここは良い国だなあ
九州の最南端にある串間で、ターコイズ色の海を見ながら、人一人いない海岸で、豊かな自然を独り占めしている贅沢な時間。波が穏やかな海の向こうには船が何隻か見える。海と共に人が生きている。人が支配しているのではなく、自然と共存している調和のある穏やかさ。

 

海を眺めていたら不意に、(ここは良い国だなあ)という言葉が出てきた。ただそれは、自分の顕在意識が言わせているのかもしれない。私は確認するために、繰り返し出てくる(ここは良い国だなあ)という言葉を消そうとした。けれど蓋をこじ開けるように、その言葉が何度も湧き出てくる。ならば海からのメッセージだと考え、能動的に考えることをやめて、その思考を宙に投げ受動的に眺めることにした。

そこで思ったのは、(なんだ、そんなシンプルなことだったのか!)ということ。国や土地を守り繁栄させることも、人の能力を伸ばし育むことも、自分自身を成長させることも、そんなシンプルなことだったのかと、宙に投げた思考がブーメランのように、気づきとなって戻ってきた。

そうか、ここはすでに良い国なんだ。そうか、この子はすでに良い子なんだ。そうか、自分もすでに何の努力をしなくても、なにかしらの能力があって、良いところがあって、そこに目を向けて伸ばせばいいのか。

そのプロセスは自分に対しても、子どもにも大人にも、グループに対しても、そして国に対しても、同じことが言えるのではないか。なのにそんなシンプルなことが、一体どれだけ湾曲されて複雑になって、人の成長を妨げ、苦しい思いをしたり頑張ったりするのか。

 

今年夏、九州での馬セミナーでは親子6組が5日間キャンプ場のキャビンに滞在し、お母さんたちが霧島の乗馬クラブで、馬から非言語コミュニケーションを学ぶ間、子どもたちは乗馬レッスン。それを2グループ行った。

一組目と二組目の合間の週末、お手伝いしてくれた明美さんと彼女の子どもたちと、宮崎県の串間の海辺の一軒家を数日借りて滞在。馬セミナーの合間の休息日となった数日間は、何もしないで過ごそうと考えていた。活動を止め何もしない時間は様々な学びをもたらしてくれる。
馬セミナーでは毎晩、

お母さんたちとのトーキング・サークルの時間を設けた。トーキング・サークルでは皆で輪になって座り、自分のことを語り、そして人の話を心で聞く。これはネイティブ・アメリカンの伝統的な方法で、特別な誰かが喋り、その他の人は話を聞くだけでなく、一人一人が語る時間を持てる。この対話の方法であれば、例え立場が弱い人や、気が弱い人や自信がない人でも、気が強くて声が大きく発言力がある人と同じように、皆から平等に自分の話を聞いてもらえる。非常に民主的な方法。

日本人だけでなくアメリカ人のグループでも、トーキング・サークルの時に往々にしてある共通点が浮上する。それは多くの人はどうも自分は十分ではないと思っているという点。自分がやっていることは十分ではないと思っているだけでなく、自分自身の存在そのものも、ただ存在しているだけでは十分ではない。

つまり何かしなければ愛してもらえない、存在意義がない、認めてもらえないと思っている。そんな隠れた気持ちが私も含め誰の中にもあり、そのため人はあくせくと足りないところを埋めるように、闇雲な行動となるアクティビティーを増やしていく。

私はこんなことも知っているという知識を増やし、私はこんなこともできるという活動を増やし、私はこんなものを持っているという、死ぬ時には何の意味もなさないものを得るために、一生懸命アクティビティーを増やす。そして悩む。無いから、足りないから、欠けているから、それらを得るためにどうしたらいいか悩む。親がそうだと、子どものことでも欠けている部分ばかりが目に映る。

もちろん知識や活動や物、それらには高い価値を持つものもあると思う。けれどもそれを得ようとする動機が、足りてない自分の穴埋めではなく、すでに十分幸せな状況を更に向上させたり、または他者とシェアできるために得ていこうとするのであれば、アクティビティーがアクションという、自然な行為となって動けるように思う。

日本という国はすでに良い国だというところから、私は意識していこうと思う。日本を立て直さなければいけないとか、改革しなければいけない、ではなく、すでに良いところに目を向けていきたい。そのためには、まずは自分から。自分の良いところに目を向けた上で、現実をちゃんと見据え、社会で活かされる人間になるよう変化したい。

人が一つの地点から別の地点に移行するという変化には、表層にある活動ではなく、何をどう行うかという行為の積み重ねが重要に思う。

もし何億人という日本人が、自分の国の良さを心から信じることができたなら、きっと日本は自然と良い方向に行くに違いない。でもそのためには、一人一人が自分自身のことを認め愛すること。先ずは自分から。それ在りき。と九州の海が私に教えてくれた。

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