感情の話(1)

感情の話(1)

子どもの頃に読んだサイエンスフィクションに出てくる、高機能で感情がないロボットの話には、好奇心をそそられたというよりは、子どもなりに(そんな世界になって欲しくない)という灰色の世界を想像した記憶があります。

何を見ても何を体験しても感じることができないとしたら、多くの人は生きている意味がないとさえ感じるものではないでしょうか。

脳梗塞になった母とこんな会話をしたことがありました。母に「欲が動機となって行動することについてどう思う?」と聞きました。脳梗塞のリハビリとして、母には思考する訓練と、考えたことを言葉にして発する練習が必要でした。

欲とは必要以上の物を欲しがる感情です。人は普通に息ができている時に、もっと酸素が欲しいとは思わないものです。でももし、酸素がもっとなくては困るとか、酸素を確保しておこうとか、人よりきれいな酸素が欲しいとか、必要以上に何かを欲しがる時には、何らかの感情によって動かされているのだと思われます。欲はその感情の一つ。このことは多くのことに当てはまると考えます。

子育てや子どもの教育で、(もっと多く、更に上に、人より優れて、たくさん確保して、競争で負けないように・・)と、子どもへの働きかけをしてしまうことは、誰にでもあることではないでしょうか。

たとえ目の前の子どもは健康で、お母さんと一緒にいるだけで幸せそうにしていて、小さなことで喜こべて、顔はいつもニコニコしているのにも関わらず、親は必要以上のことを得たい、持たせてあげたいという、欲という感情に動かされてしまうことが多々あります。そしてまた、そうした表面上の欲の奥深くには、恐怖心や不安や自信のなさが隠れていたりします。

私が母に欲について質問すると、母は間髪入れずに「欲はあった方がいいのよ」と言いました。自分自身の実生活を振り返った時に、完璧に実践できていなくても、欲によって人は動かされるべきではないと、少なくても道徳的に、誰でもそう考えるはずという固定観念があったので、私は母のその一言に驚かされました。

欲はあった方がいいのか?よくないのか?心が健康でいられるために、誰の中にも眠っている、時には邪魔で排除したい欲という感情でさえ、全く感情がない灰色の世界と比べれば、人生を面白いものにさせてくれとは思います。

そういう意味では、欲はあった方がいいのかもしれません。そのようにたとえ一見ネガティブに思える感情でも、ないよりはあった方が人生は興味深いものになるでしょう。

但し興味深いと思えるのは、起こっている事象を一歩離れたところから、客観的に眺めていられる時にのみ、感じらるものだと思います。自分自身がネガティブな感情の荒波に吸い込まれ、その中から這い出てくることができず、ネガティブな波の中で溺れている時には、そんな風に悠長には考えられない、というのが常でしょう。

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